在職中の転職活動でつまずくのは、時間が足りないことよりも、線引きが曖昧なまま進めてしまうことです。会社の時間や設備をどこまで使わないか、現職の仕事をどこまで落とさないか、応募先に在職中であることをどう伝えるか。ここが決まっていないと、活動そのものより気疲れの方が大きくなります。
本記事では、在職中に特有の判断を扱います。会社の資源との線引き、面接時間の作り方、現職の成果を落とさない進め方、入社可能時期の答え方、そして活動が長引いたときの対処です。転職準備の工程そのものは転職準備は何から始める?7ステップ完全ガイドにまとめているので、あわせてご覧ください。
- 会社の時間・設備・情報は使わない。ここが最も揉めやすい
- 面接時間は有給の取得単位を先に確認してから設計する
- 現職の成果が落ちると、退職時の引き継ぎまで難しくなる
- 入社可能時期は、就業規則の申し出時期と引き継ぎ期間から逆算して答える
- 活動が長引いたら、期限を切って一度立て直す
在職中の活動で最も注意すべきことは?
時間の確保は工夫でどうにかなりますが、会社の資源を使ってしまうと、あとから取り返せません。特に次の3つは、就業規則や誓約書で明確に禁止されていることが多い領域です。
| 資源 | やってはいけないこと | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 時間 | 就業時間中の応募・面接・エージェントとの連絡 | 始業前、昼休み、終業後、休暇日に行う |
| 設備 | 社用PC・社用スマートフォン・社内ネットワークでの活動 | 私物の端末と回線を使う |
| 連絡先 | 社用メールアドレスを応募先や紹介会社に登録する | 個人のメールアドレスを使う |
| 情報 | 顧客リストや社内資料を職務経歴書に転記する | 数値は比率や規模感に置き換える |
| 備品 | 会社の複合機で応募書類を印刷する | 自宅かコンビニで印刷する |
社用PCで転職サイトを見ていた、社用メールで面接日程を調整していた、という形で発覚するケースがあります。多くの会社で、社用端末の利用履歴は管理対象です。「見られていないはず」を前提にしないでください。
情報の持ち出しは、より重い問題になりえます。職務経歴書に実績を書く際、顧客名や非公開の数値をそのまま転記すると、守秘義務に触れる可能性があります。書き方は職務経歴書の書き方を参照してください。
面接の時間はどう作る?
選考が始まると、日程の主導権は応募先に移ります。先に自分が出せる時間帯を把握しておくと、調整が速くなります。
- 有給休暇の取得単位を確認する——半日単位や時間単位で取れるかは会社の制度によります。就業規則で確認してください
- 出せる時間帯を書き出す——平日の始業前、昼休み、終業後、休暇日。曜日ごとに違う場合はそれも整理します
- 応募時に伝えておく——「在職中のため、平日は18時以降または休暇取得日での調整をお願いしたい」と先に共有します
- オンライン対応の可否を聞く——移動時間が不要になり、昼休みでも収まる場合があります
有給を取る際の理由は、詳細に説明する必要はありません。会社によって申請時の運用は異なりますが、私用として扱われるのが一般的です。ただし、同じ曜日に繰り返し取得すると気づかれやすくなるため、日程は分散させる方が無難です。
年次有給休暇の制度そのものについては、労働基準法(e-Gov法令検索)をご確認ください。取得単位の運用は会社ごとに異なるため、本記事では個別の判断を示しません。
現職の成果を落とさないためには?
転職活動を始めると、現職への集中が下がりがちです。しかし成果が落ちると、次の3つが同時に起こります。
- 周囲に気づかれる——急に成果や態度が変わると、理由を探されます
- 退職時の交渉が不利になる——引き継ぎ期間や有給消化の相談で、立場が弱くなります
- 転職しない選択が取りにくくなる——活動の結果、残る判断をした場合に戻る場所が悪くなります
3つ目は見落とされがちです。転職活動は必ず転職に至るとは限りません。動いた結果、現職に残る判断をする人もいます。その可能性を潰さないためにも、現職での仕事は落とさない方が選択肢は広がります。
現実的な進め方は、活動の時間を固定枠にして、それ以外の時間には持ち込まないことです。仕事中に求人を見始めると、どちらも中途半端になります。枠を決めておくと、枠の外では現職に集中できるという副次的な効果もあります。
在職中の進め方や、面接日程の組み方について相談したい方は、個人の方向けのお問い合わせフォームから「キャリア相談・転職相談」を選んでご連絡ください。当社では在職中の方の状況に合わせて、選考のペース配分もご一緒に調整します。求職者の方からいただく費用は0円です。
同時に何社まで受ける?
在職中は使える時間が限られるため、応募社数の設計が結果を左右します。多すぎると準備が薄くなり、少なすぎると比較ができません。
| 段階 | 並行させる目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 書類応募 | 5〜10社 | 書類は使い回せる部分が多く、通過率のばらつきを吸収できる |
| 一次面接 | 3〜5社 | 1社あたり準備に時間がかかるため、これ以上は薄くなる |
| 最終面接・内定 | 2〜3社 | 比較検討ができる最小限。時期を揃える必要がある |
意識したいのは、内定の時期を揃えることです。1社だけ先に内定が出ると、他社の選考結果を待つ間に承諾期限が来ます。応募のタイミングをずらしすぎないでください。
ただし、志望度の高い企業は選考プロセスが長いこともあります。第一志望群を先に、比較用の企業を少し後にずらすと、時期が揃いやすくなります。人材紹介会社を介している場合は、この調整を担当者に相談できます。
応募先には在職中であることをどう伝える?
在職中であることは、隠す必要も、詫びる必要もありません。むしろ在職しながら活動していることは、計画的に動いている印象につながります。
答え方を準備しておきたいのが「入社可能時期」です。ここを曖昧にすると、採用計画が立てられず、選考が止まることがあります。
- 就業規則の申し出時期を確認する——「退職日の1か月前まで」といった規定を先に見ます
- 引き継ぎに必要な期間を見積もる——担当業務の量と後任の有無で変わります
- その合計で答える——「内定をいただいてから、およそ1か月半から2か月で入社可能です」のように幅を持たせます
- 調整の余地があることも添える——「ご希望の時期があれば、可能な範囲で調整いたします」
実際より短く答えて、あとから延ばすのは避けてください。入社日は採用計画の起点になっており、変更は応募先に負担をかけます。逆に長すぎる期間を答えると、他の候補者との比較で不利になることがあります。
紹介会社は使った方がいい?
在職中で時間が限られる場合、日程調整と情報収集を代行してもらえる分、負担は下がります。ただし使えば楽になるわけではなく、任せられる部分と自分でやるべき部分が分かれます。
- 任せられること——求人の絞り込み、応募先との日程調整、条件面の伝達、選考状況の管理
- 自分でやること——転職の軸を決める、応募書類の中身を書く、面接で話す内容を用意する
- 確認したいこと——在職中であることを伝えたうえで、面接可能な時間帯に対応してもらえるか
担当者には、在職中であること、出せる時間帯、活動を知られたくない範囲を最初に共有してください。現職企業をスカウトの対象から除外したい場合も、その旨を伝えます。共有が遅れると、想定外のタイミングで連絡が入ることがあります。
面談で何を話すかは転職エージェントとの面談で何を話す?にまとめています。なお、紹介会社は企業側から手数料を受け取る仕組みで運営されているため、成約を優先した提案がないとは言えません。担当者の提案は、判断の材料として扱ってください。
現職に知られたらどうする?
知られる経路は限られています。社用端末の利用履歴、SNSの職歴欄の更新、求人サイトのスカウト機能で現職企業に見つかる、社内の誰かに話したことが伝わる、といったところです。
実際に知られた場合の対応は、活動の段階によって変わります。
- 内定が出ている場合——事実を伝え、正式な退職の申し出に進みます。隠し続けても状況は改善しません
- 選考中の場合——検討段階であることを伝えるか、明言を避けるかは状況次第です。ただし、事実と異なる説明は後で立場を悪くします
- 情報収集の段階——キャリアを考える時期であると伝える形が現実的です
いずれの場合も、現職での仕事を落とさないことが最大の防御になります。成果が出ている人が「キャリアを考えている」と言っても、扱いは大きく変わりません。
知られたことをきっかけに、退職の時期を一方的に早められる、担当業務を外される、といった扱いを受けた場合は、やり取りの記録を残してください。厚生労働省の「確かめよう労働条件|相談機関のご紹介」に、労働条件に関する無料の相談先が案内されています。
ただし、多くの場合はそこまで至りません。「転職を考えている」と分かった時点で、上長が引き止めに入るか、静観するかのどちらかです。慌てて取り繕うより、現職の仕事を淡々と続ける方が状況は落ち着きます。
1週間の時間配分はどう組む?
在職中は、まとまった時間が取れないことを前提に組み立てます。工程ごとに必要な集中の深さが違うため、そこに合わせて時間帯を割り当てます。
| 工程 | 必要な集中 | 割り当てる時間帯 |
|---|---|---|
| 求人を眺める・情報収集 | 浅い | 通勤時間、昼休み、就寝前 |
| キャリアの棚卸し | 深い | 週末のまとまった時間 |
| 応募書類の作成 | 深い | 週末のまとまった時間 |
| 応募先ごとの書き分け | 中 | 平日夜の30分枠 |
| 面接の準備 | 中 | 面接前日の夜 |
| 日程調整・連絡 | 浅い | 始業前、昼休み |
深い集中が要る工程を平日夜に置くと、疲れている時間帯に難しい作業をすることになり、進みません。棚卸しと書類作成は週末に寄せ、平日は差し替えと調整に充てる形が現実的です。
棚卸しと書類は、応募を始める前に終えておくと選考期が楽になります。選考が始まると時間の主導権が応募先に移るためです。手順はキャリアの棚卸しとは?転職前に1人でできるやり方を参照してください。
活動が長引いたらどうする?
在職中の活動は期限が無いため、長期化しやすい構造にあります。半年、1年と続くと、活動そのものが日常になって判断が鈍ります。
立て直す手順は次のとおりです。
- 期限を切る——「あと3か月で結論を出す」と決めます。期限がないと動きが止まります
- 止まっている工程を特定する——応募数が少ないのか、書類で落ちているのか、面接で止まっているのか
- 工程ごとに手を打つ——応募数なら条件の見直し、書類なら書き直し、面接なら準備の作り直し
- 期限を過ぎたら、いったん止める——現職に残る判断も含めて、そこで区切ります
止まっている工程が分からない場合は、応募から現在までの記録を並べてみてください。応募社数、書類通過の有無、面接まで進んだ数を書き出すと、どこで落ちているかが見えます。キャリアの棚卸しに立ち返る必要があるのか、書類の問題なのかが判断できます。
記録が残っていない場合は、そこから始めてください。在職中は活動が断続的になるため、記憶だけで振り返ろうとすると印象論になります。応募先・応募日・結果を1か所にまとめておくだけで、次の判断がしやすくなります。
よくある質問
在職中と退職後、どちらで活動する方がいいですか?
収入が続く点、活動が長引いても生活への影響が小さい点で、在職中の方が選択肢を保ちやすくなります。ただし時間の制約は大きくなります。現職の状況や貯蓄の余裕によって適した進め方は変わるため、一律の正解はありません。
面接のために有給を取るとき、理由は何と言えばいいですか?
詳細に説明する必要はありません。私用として扱われるのが一般的です。ただし申請時の運用は会社によって異なるため、就業規則を確認してください。同じ曜日に繰り返し取得すると気づかれやすいため、日程は分散させる方が無難です。
社用のメールアドレスを応募に使ってもいいですか?
使わないでください。多くの会社で社用端末やメールの利用履歴は管理対象であり、発覚の原因になります。個人のメールアドレスと私物の端末を使ってください。応募先や紹介会社に登録する連絡先も同様です。
入社可能時期はどう答えればいいですか?
就業規則の退職申し出時期と、引き継ぎに必要な期間を合計して、幅を持たせて答えます。実際より短く答えて後から延ばすのは避けてください。入社日は採用計画の起点になっているためです。
現職の同僚に相談してもいいですか?
おすすめしません。悪意がなくても情報は伝わります。相談したい場合は、社外の人か、紹介会社の担当者など守秘義務のある相手を選んでください。
転職活動をして、結局残るのは問題ですか?
問題ありません。活動を通じて自分の市場価値や現職の位置づけが分かり、残る判断に納得できたのであれば、それも成果です。その選択肢を残すためにも、現職での仕事を落とさないことが重要になります。
出典・参考
- 年次有給休暇については、労働基準法(e-Gov法令検索)をご確認ください。取得単位の運用は会社ごとに異なります
- 会社の設備・情報の取り扱いは、各社の就業規則および入社時に締結した誓約書によります。本記事では一般的な考え方を示すにとどめ、個別の判断はしません
- 労働条件に関する相談先は、厚生労働省「確かめよう労働条件|相談機関のご紹介」に案内があります
- 時間の作り方、入社可能時期の答え方、活動が長引いたときの立て直し方は、当社のキャリア相談および人材紹介の実務で用いている整理方法をもとにしたものです。公的な基準ではありません
- 本記事は法的な助言を目的としたものではありません。個別の事案については、専門家または勤務先の規程をご確認ください
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