在職中の転職活動は、週3〜5時間の固定枠を基本にし、応募と面接が重なる時期だけ一時的に増やす前提で組めば進められます。あわせて応募書類を先に完成させておきます。在職中に特有の壁は「時間」「秘匿」「日程調整」「退職交渉」の4つで、いずれも事前の段取りで解消できます。
この記事では、在職中の転職活動で相談の多い7つの疑問に一問一答で回答し、3〜6カ月のスケジュールモデルを示します。休暇と退職の部分は、条文と厚生労働省の公開情報を引用して整理します。
- 活動時間は基本が週3〜5時間。平日夜30分×3日+休日2時間が現実的な目安(応募と面接が重なる時期は増える)
- 応募書類を先に完成させると、応募開始後の負荷が下がる
- 面接日程は「平日夜・土日・オンライン」の3枠を初回連絡で提示する
- 退職を切り出すのは内定承諾後。就業規則の申出期限を先に確認する
- 年次有給休暇は「労働者の請求する時季」に与えるのが原則(労働基準法39条5項)
7つの疑問と結論は次のとおりです。
| 疑問 | 結論 |
|---|---|
| Q1 時間はどう作る? | 平日夜30分×3日と休日2時間を固定枠にし、書類作成を先に終わらせる |
| Q2 会社に知られない方法は? | 完全に隠す方法はない。公開設定・使用機器・社内での発言・日常の行動の4点管理で下げる |
| Q3 面接日程はどう調整する? | 在職中と先に伝え、平日夜・土日・オンラインの3枠を提示する |
| Q4 退職はいつ切り出す? | 内定を承諾した後に、直属の上司へ口頭で伝えるのが基本 |
| Q5 有給休暇は消化できる? | 可能。労働者が請求する時季に与えるのが法律上の原則 |
| Q6 入社時期は交渉できる? | 「退職申出期限と引き継ぎ所要期間のうち長い方」+有給消化で逆算する。目安は内定承諾から1〜3カ月後 |
| Q7 やってはいけないことは? | 会社の設備・勤務時間の私的利用と、退職前の情報持ち出し |
【Q1】在職中に転職活動の時間はどう作る?
在職中の転職活動の時間は、平日夜30分×3日と休日2時間を固定枠にすれば、週3〜5時間を確保できます。
要点は、作業を「まとまった時間が要るもの」と「スキマでできるもの」に分けることです。混ぜてしまうと、平日の細切れ時間で書類作成に手をつけて進まない状態になります。
| 作業の種類 | 具体例 | 置く時間帯 |
|---|---|---|
| まとまった時間が要る | キャリアの棚卸し、職務経歴書の作成、想定問答づくり | 休日の午前2時間 |
| スキマでできる | 求人チェック、スカウト返信、日程調整の連絡 | 通勤時間・昼休み・平日夜30分 |
最優先は応募書類の完成です。職務経歴書と履歴書を先に仕上げておくと、応募のたびに一から書く作業がなくなり、応募先ごとの調整だけで出せる状態になります。書き方は採用担当者に刺さる職務経歴書の書き方を、スキマ時間の使い方は通勤時間をキャリアアップの学び時間に変える3つの工夫を参考にしてください。
勤務先に時間単位の年次有給休暇の制度があれば、1〜2時間だけ休んで面接に充てる選択肢もあります。時間単位の年次有給休暇は、労使協定を結んだ場合に年5日の範囲内で取得できる制度です(労働基準法39条4項/厚生労働省「確かめよう労働条件」年次有給休暇、参照日2026年8月8日)。制度の有無は就業規則で確認してください。
【Q2】転職活動を会社に知られないためにできることは?
転職活動を会社に完全に隠す方法はありません。ただし公開設定・使用機器・社内での発言・日常の行動の4点管理でリスクは下げられます。
在職中の転職活動が勤務先に伝わる経路は、おおむね次の4つです。対策も経路ごとに分けると漏れが減ります。
- 求人サービス経由:登録した職務経歴が自社の採用担当者に見えるケース。多くのサービスにある公開範囲の設定や、特定企業を非表示にする機能を確認する
- 会社の設備経由:会社のPC・メールアドレス・複合機・社内Wi-Fiの利用履歴。応募関連の作業は私物の端末と個人のメールアドレスに統一する
- 社内の会話経由:同僚への相談が伝わるケース。退職日が確定するまでは社内で共有しない
- 行動の変化経由:急なスーツ着用、平日の半休の連続、離席中の私用電話。面接はオンラインや終業後を優先し、服装は当日に着替える
求人サービスに登録した情報の扱いには、法律上のルールがあります。職業安定法5条の5第1項は、職業紹介事業者・特定募集情報等提供事業者・求人者などに対し、求職者等の個人情報を「その業務の目的の達成に必要な範囲内で」当該目的を明らかにして収集し、収集の目的の範囲内で保管・使用しなければならないと定めています。同条2項は、適正な管理のために必要な措置を講じることも義務づけています。ただし、勤務先から見えない状態にできるかどうかは各サービスの機能によって異なるため、公開範囲の設定は登録時に自分で確認する必要があります。
なお、勤務時間中の私的な活動や会社設備の私的利用は、就業規則上の問題になり得ます。勤務時間外の行動をどこまで規程で制約できるかは、会社の定めと個別の事情によって判断が分かれる領域です。この記事は一般的な整理にとどめます。迷う場合は社内規程を確認したうえで、社会保険労務士・弁護士や都道府県労働局の総合労働相談コーナーへ相談してください。
【Q3】面接の日程はどう調整する?
面接の日程は、応募の時点で在職中であることを伝え、平日夜・土日・オンラインの3枠を先に提示すると調整が進みます。
日程調整が滞るのは、候補日が出てこない状態です。企業は他の応募者や面接官の予定と合わせて枠を押さえるため、候補が1つしかないと再調整が発生します。在職中の応募者が押さえたい手順は次の4点です。
- 応募時または初回連絡時に「在職中のため平日日中の調整に数日いただきます」と先に伝える
- 候補日は3つ以上、時間帯の幅つきで出す(例:8月26日18時以降、8月28日18時以降、8月30日終日)
- 返信は24時間以内を目安にする。候補日を多く出せない場合は、返信を早くして調整の往復回数を減らす
- 最終面接は平日日中・対面になる場合を想定し、半休か1日分の年次有給休暇を残しておく
オンライン面接の場所選びにも注意が必要です。カフェやオープンスペースは、現職や応募先の情報が周囲に聞こえるおそれがあります。自宅の個室か個室型のワークスペースが安全です。日程調整の手間を減らしたい場合は、人材紹介会社に企業とのやり取りを代行してもらう方法もあります。自己応募との違いは転職エージェント vs 自己応募で比較しています。
【Q4】退職はいつ・誰に切り出す?
退職を切り出すのは、転職先の内定を書面で承諾した後です。相手は直属の上司で、口頭で伝えてから書面を出します。
内定前に退職を伝えると、選考が不調に終わったときに現職での立場だけが悪くなります。「内定承諾 → 上司へ報告 → 引き継ぎ計画の作成 → 退職届の提出」の順に固定するのが安全です。
切り出す時期の逆算には、就業規則の申出期限を使います。期間の定めのない労働契約で働く労働者が退職する場合、法律上は原則として2週間前までに申し入れることと定められています(民法627条1項)。厚生労働省の「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなども、同項を根拠に同じ説明をしています(参照日2026年8月8日)。
一方、就業規則で「1カ月前」「2カ月前」と定める会社もあります。この点について厚生労働省の同ページは、退職の申し入れから原則として2週間の経過で労働契約は終了するとしたうえで、「会社の就業規則などで、この期間を大幅に伸ばすよう規定や上記の期間を超える場合にも会社の許可を条件とするような規定が設けられていたとしても、そのような規定は無効とされることとなります」と説明しています(参照日2026年8月8日)。そのうえで実務上は、引き継ぎを滞りなく終える観点から就業規則の期限に沿って早めに申し出る、という選択もあります。会社が退職を認めないなどのトラブルになりそうな場合は、弁護士や都道府県労働局の総合労働相談コーナーへ相談してください。
引き止めへの備えも要ります。伝える前に「退職理由」「最終出社日の希望」「引き継ぎ案」の3点をメモにすると、感情的な議論になりにくくなります。
【Q5】退職前に有給休暇は消化できる?
退職前の有給休暇の消化は可能です。使用者は、年次有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならないとされています(労働基準法39条5項)。
厚生労働省の「確かめよう労働条件」年次有給休暇では、年次有給休暇を「分割するか、又は何日継続するかも、原則として労働者が決定でき、使用者の承認は必要ではありません」と説明されています。いつ取得するかは労働者が決められる、というのが原則の枠組みです(参照日2026年8月8日)。
ただし使用者には、請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に、「他の時季に」与えることができる時季変更権があります(労働基準法39条5項ただし書)。条文が想定しているのは休暇を別の時季へ振り替えることであり、退職日より後には振り替える先の時季がありません。もっとも、退職日までの範囲で取得日の調整を求められることはあります。個別の可否は事情によるため、ここでは断定しません。
在職中の転職活動で有給休暇を扱う実務手順は次の3つです。
- 残日数を給与明細や勤怠システムで先に確認する(面接用に数日を残しておく)
- 退職の申し出と同時に「最終出社日」と「退職日」を分けて提示する
- 引き継ぎ完了予定日を添えて申請する。引き継ぎ計画とセットにすると調整がまとまりやすい
【Q6】入社時期はどこまで交渉できる?
入社時期は、①退職の申し出期限と引き継ぎ所要期間のうち長い方と、②有給休暇の消化日数を足して決まります。下表の目安で積み上げると、内定承諾からおおむね1〜3カ月後が現実的なレンジになります。選考の早い段階で希望時期を伝えることが前提です。
注意したいのは、引き継ぎ期間を別枠で上乗せしないことです。引き継ぎは退職を申し出てから最終出社日までの期間内で行うため、①には申出期限と引き継ぎ所要期間の長い方だけを入れます。両方を足すと必要期間を多く見積もり、実際より遅い入社日を提示することになります。「なるべく早く」ではなく日付で提示できると、企業側も動きやすくなります。
| 要素 | 目安 | 確認先 |
|---|---|---|
| 退職の申し出から最終出社まで必要な期間(就業規則の申出期限と引き継ぎ完了のうち長い方) | 2週間〜2カ月 | 就業規則の退職申出期限 |
| 引き継ぎ期間 | 2〜4週間(上記の期間内で実施) | 担当業務の量と後任の有無 |
| 有給休暇の消化 | 残日数による | 勤怠システム・給与明細 |
希望を伝えるタイミングは、内定後ではなく一次面接の段階が適しています。企業は着任時期を前提に選考を組むため、後出しになるほど調整の余地が狭まります。
求人票に「入社時期応相談」の記載があるか、欠員補充か増員募集かは、交渉余地を測る手がかりになります。欠員補充では着任時期が募集要件に含まれていることがあり、その場合は1カ月以上の猶予を取りにくくなります。複数社を並行して受けている場合は、選考ペースをそろえることも調整につながります。
【Q7】在職中の転職活動でやってはいけないことは?
在職中の転職活動で避けるべきは、会社の設備・勤務時間の私的利用と、退職前の情報持ち出しの2つです。
この2つは就業規則違反や法的なトラブルに直結する可能性があります。具体的には次の7項目を避けてください。
- 会社のPC・メールアドレス・複合機で応募書類を作成する、送信する、印刷する
- 勤務時間中に面接を受ける、応募先と電話でやり取りする
- 顧客名簿・設計資料・営業データなど現職の情報を持ち出す(秘密として管理され、有用で、公然と知られていない情報は不正競争防止法2条6項の「営業秘密」にあたり得ます。就業規則上の問題にもなり得ます)
- 内定が出る前に退職の意思を伝える、社内で転職活動を話題にする
- 引き継ぎを終えないまま最終出社日を迎える
- 面接で現職や上司への不満を中心に話す(転職理由は「次でやりたいこと」で組み立てる)
- 職務経歴や在籍期間を実際と異なる内容で記載する
迷いやすいのは、応募先から求められる「現職の実績資料」の扱いです。数値や成果を口頭・文章で説明することと、社内資料そのものを渡すことは別の行為です。提出を求められた場合は、機密情報にあたらない形に加工するか、提出できない理由を率直に伝えてください。
在職中のスケジュールはどう組む?(3〜6カ月モデル)
在職中の転職活動のスケジュールは、準備開始から入社まで3〜6カ月を見込み、前半に書類作成を寄せる組み方が基本です。週あたりの時間は基本が3〜5時間で、応募と面接が重なる7〜12週目だけ4〜6時間に増える想定です。
| 時期 | 主なやること | 週あたりの目安時間 |
|---|---|---|
| 1〜2週目 | キャリアの棚卸し、転職の軸を決める | 3〜4時間 |
| 3〜6週目 | 職務経歴書・履歴書の作成、求人リサーチ | 3〜5時間 |
| 7〜12週目 | 応募と面接(1〜3社の並行が目安) | 4〜6時間 |
| 13〜16週目 | 内定・条件確認・退職の申し出 | 2〜3時間 |
| 17〜24週目 | 引き継ぎ、有給休暇の消化、入社準備 | 業務時間内が中心 |
市場環境も確認しておきましょう。厚生労働省が2026年7月31日に発表した一般職業紹介状況によると、2026年6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で、前月比0.01ポイントの上昇です。正社員有効求人倍率は1.00倍、新規求人倍率は2.16倍でした(参照日2026年8月8日)。これはハローワークが扱う求人・求職を対象とした全国計の数値(新規学卒者を除きパートタイムを含む)で、民間の求人サービスの状況をそのまま示すものではありません。
この記事は、在職中に特有の悩み(時間・秘匿・日程調整・退職交渉)に絞って回答しています。準備工程の全体像を押さえたい場合は、上のスケジュール表の時期区分に沿って、キャリアの棚卸し→書類作成→応募・面接→内定と条件確認→引き継ぎと退職準備の順に進めてください。書類作成の具体的な手順は採用担当者に刺さる職務経歴書の書き方で解説しています。
よくある質問
在職中と退職後では、どちらが転職活動に有利ですか?
一概には言えません。収入が続くため条件交渉で焦りにくい点は在職中の利点です。退職後は時間を確保しやすい一方、離職期間の説明が必要になります。生活費の見通しと希望する入社時期から選んでください。
在職中の転職活動はどれくらいの期間がかかりますか?
準備開始から入社まで3〜6カ月が一般的な目安です。在職中は使える時間が限られるため、6カ月を超えることもあります。応募社数を増やすより、書類の完成度を上げてから応募する方が結果的に短くなる傾向があります。
面接で「いつから入社できますか」と聞かれたら、どう答えればよいですか?
日付で答えるのが基本です。就業規則の退職申出期限、引き継ぎ期間、有給休暇の残日数から逆算し、「内定承諾から約2カ月後、11月1日入社が可能です」のように伝えます。前後の調整余地もあわせて示すと交渉が進みます。
年次有給休暇を取るとき、理由を会社に伝える必要はありますか?
労働基準法39条には、年次有給休暇の取得にあたって理由の申告を求める定めはありません。厚生労働省の「確かめよう労働条件」年次有給休暇も、分割するか何日継続するかは「原則として労働者が決定でき、使用者の承認は必要ではありません」と説明しています。ただし社内の申請様式は会社ごとに異なるため、運用に疑問がある場合は社内規程を確認し、都道府県労働局の総合労働相談コーナーへ相談してください。
退職を強く引き止められた場合はどうすればよいですか?
まず退職の意思を書面で提出し、提出日を記録に残してください。期間の定めのない労働契約については、民法627条1項により原則として2週間前までに申し入れることと定められています。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、就業規則でこの期間を大幅に伸ばす規定などが設けられていても「そのような規定は無効とされることとなります」と説明しています。解決しない場合は都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど公的窓口に相談してください。
まとめ|在職中の転職活動は段取りで進められる
在職中の転職活動は、基本は週3〜5時間の固定枠(応募と面接が重なる時期は一時的に増やす)、書類の先行完成、日程3枠の先出し、内定後の退職申し出という4つの段取りで進みます。時間・秘匿・日程・退職交渉のどれも、事前に決めておけば当日の判断に迷いません。
休暇や退職の取り扱いは、会社の規程と個別の事情で結論が変わります。この記事は一般的な整理であり、個別の判断は就業規則の確認と、社会保険労務士・弁護士や都道府県労働局の総合労働相談コーナーへの相談をおすすめします。
出典(いずれも参照日2026年8月8日)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)/39条4項・5項
- 民法(e-Gov法令検索)/627条1項
- 職業安定法(e-Gov法令検索)/5条の5
- 不正競争防止法(e-Gov法令検索)/2条6項
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」年次有給休暇
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなど
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)」2026年7月31日公表
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