早期離職を減らす取り組みは、入社後の引き留め策だけでは完結しません。厚生労働省の統計では、令和4年3月に卒業して就職した大卒者の33.8%が3年以内に離職し、従業員5〜29人規模の事業所に就職した大卒者では52.0%に達します。初めて勤務した会社をやめた理由の上位は、労働時間・休日・休暇の条件、人間関係、賃金、仕事内容でした。このうち労働時間・休日・休暇の条件、賃金、仕事内容は求人票と面接で直接伝えられる情報であり、人間関係も職場見学や配属先メンバーとの面談である程度は事前に確認できます。本記事では、定着している社員から逆算して採用基準を作る4ステップと、求人票・面接・入社後30日フォローまでの実務を解説します。
この記事の要点は次の5つです。
- 大卒の3年以内離職率は33.8%、従業員5〜29人規模の事業所では52.0%(厚生労働省・令和4年3月卒業者、2025年10月24日公表)
- 初めて勤務した会社をやめた理由の上位は、労働時間・休日・休暇の条件、人間関係、賃金、仕事内容(3つまでの複数回答)
- 採用基準は「定着している社員の共通点」から逆算して作る
- 求人票と面接では、良い面と大変な面を数字とセットで開示する
- 入社後30日のフォロー結果を採用基準に還元し、採用の精度を上げ続ける
早期離職はなぜ採用段階から対策する必要があるのか?
初めて勤務した会社をやめた理由の上位に、労働時間・休日・休暇の条件、賃金、仕事内容という、求人票と面接で扱える項目が並ぶためです。
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2025年10月24日公表)によると、令和4年3月に卒業して就職した人の、就職後3年以内の離職率は大卒33.8%、高卒37.9%です。注目すべきは事業所規模による差で、規模が小さいほど離職率は高くなります。
| 事業所規模 | 高卒の3年以内離職率 | 大卒の3年以内離職率 |
|---|---|---|
| 5〜29人 | 54.6% | 52.0% |
| 30〜99人 | 45.2% | 41.9% |
| 100〜499人 | 36.7% | 33.9% |
従業員5〜29人規模の事業所では、新卒の約2人に1人が3年以内に辞めている計算です。では、なぜ辞めるのか。厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」(2024年9月25日公表)の個人調査(令和5年10月1日時点で満15〜34歳の労働者が対象。調査対象数22,958人、有効回答13,218人)によると、在学していない若年労働者のうち42.7%が、最終学校卒業後に初めて勤務した会社では現在勤務していません。この「初めて勤務した会社をやめた層」を分母に、やめた主な理由を尋ねた結果は次のとおりです(3つまでの複数回答)。
- 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった:28.5%
- 人間関係がよくなかった:26.4%
- 賃金の条件がよくなかった:21.8%
- 仕事が自分に合わない:21.7%
この調査が示すのは理由の分布までで、それぞれが入社前の説明不足によるものかまでは分かりません。ただし労働時間・休日・休暇の条件、賃金、仕事内容は、いずれも求人票と面接で正確に伝えられる情報です。人間関係も、職場見学や配属先メンバーとの面談である程度は事前に確認できます。伝え方を設計し直す余地は、上位理由のいずれにも残っています。
定着から逆算する採用基準はどう作るのか?【4ステップ】
在籍3年以上の定着社員の共通点を言語化し、必須・歓迎・不問の3段階に仕分けて評価表に落とす手順です。
- 定着社員と早期離職者を比較する:在籍3年以上の社員と、1年以内に辞めた人の入社時情報を並べ、経歴・志望動機・性格面の違いを洗い出します。
- 共通点を「スキル」と「環境適合」に分ける:スキルは入社後に育てられますが、社風や働き方との相性は入社後に変えにくい要素です。まずは変えにくい側から言語化します。
- 必須・歓迎・不問の3段階に仕分ける:必須条件は3〜5個に絞ります。絞る狙いは、限られた面接時間で全員が同じ項目を最後まで確認しきれる数に収めることです。
- 評価表にして面接官全員で共有する:条件ごとに「何を質問し、どんな回答なら合格か」を書いた評価表を作り、誰が面接しても同じ基準で判定できる状態にします。
必須条件の欄に「コミュニケーション能力の高い方」「責任感のある方」といった、誰にでも当てはまる言葉が並んでいる求人票は珍しくありません。こうした条件は、応募者を絞る役にも立たず、面接で合否を分ける物差しにもなりません。例えば、繁忙期に担当業務の範囲が大きく変わる会社を考えてください。この場合は、「業務範囲が変わることをどう受け止めるか」「どこまで自分で判断して動くことが求められるか」といった、その会社固有の働き方との相性が必須条件になります。ここまで書き出しておけば、面接で確認すべきことがはっきりします。定着社員の共通点を洗い出す作業は、この「自社では当たり前すぎて言語化していない条件」を必須条件の欄に書き出す作業だと考えてください。
なお、ステップ1では在籍者と退職者の応募時情報を扱います。職業安定法5条の5は、求人者を含む名宛人に対し、求職者等の個人情報を業務の目的の達成に必要な範囲内で、その目的を明らかにして収集することを求めています。収集した情報の保管・使用も、収集目的の範囲内に限られます(本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合を除く)。選考のために集めた情報を採用基準の見直しにも使うのであれば、その利用目的を採用時にあらかじめ示しておく必要があります。個人情報保護法21条2項も、応募書類のように書面(電磁的記録を含む)で本人から直接個人情報を取得する場合は、あらかじめ本人に利用目的を明示することを求めています。応募フォームや募集要項に利用目的の記載欄を設けているか、この機会に確認してください(条文は職業安定法・個人情報の保護に関する法律)。あわせて、必須条件に年齢を書くことはできません。労働施策総合推進法9条は、募集・採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを事業主に求めています。年齢制限が認められるのは、同法施行規則1条の3第1項の各号に該当する場合に限られます。具体的には、定年年齢を下回ることを条件とする場合(無期雇用に限る)、法令上の年齢制限がある業務、長期勤続によるキャリア形成を図る場合(無期雇用・職務経験不問・新卒等に限る)などです。なお、同規則1条の3第2項は、募集・採用に係る職務の内容や、その職務を遂行するために必要とされる適性・能力・経験・技能の程度をできる限り明示するものとしています(同法9条に第2項はありません)。定着社員の共通点に年齢層の偏りが表れた場合に条件として書けるのは、年齢そのものではなく、その背後にある職務要件です(条文は労働施策総合推進法・同法施行規則)。
求人票と面接で伝えるべき「リアル情報」とは?
月平均残業時間や直近の退職者数など、良い面と大変な面をセットで数字ごと開示する情報を指します。
採用の世界にはRJP(Realistic Job Preview=現実的な仕事情報の事前開示)という考え方があります。魅力だけを並べた求人は、入社後に判明する落差を選考の後ろへ先送りすることになります。
前提として、求人票の記載は任意の工夫だけで成り立ってはいません。2024年4月1日から、労働者の募集や求人の申込みを行う際に明示すべき事項が追加されました(職業安定法5条の3第4項、職業安定法施行規則4条の2第3項)。追加されたのは次の3項目です。
- 従事すべき業務の変更の範囲
- 就業の場所の変更の範囲
- 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は更新回数の上限を含む)
ここでいう「変更の範囲」とは、雇入れ直後の内容にとどまらず、将来の配置転換なども含めた、契約期間中に変わりうる範囲を指します(厚生労働省リーフレット)。詳細は厚生労働省「令和6年4月から、募集時等に明示すべき事項が追加されます」および同リーフレット(PDF)を参照してください。まずこの法定ラインを満たしたうえで、次の項目を上乗せしていきます。求人票と面接で、法定の明示事項に加えて開示したい項目は次のとおりです。
- 月平均残業時間の実数と、繁忙期の時期・実態
- 配属部署の人数・年齢構成と、入社初日からの1日のスケジュール例
- 直近1年の退職者数と、会社として把握している退職理由
- 評価と昇給の仕組み、モデル年収の根拠
- 仕事の大変な点と、会社として行っている対策
「大変な点を書くと応募が減るのでは」と心配になりますが、応募数そのものが減る可能性は否定できません。RJPの狙いは、入社後に判明する落差を選考段階へ前倒しすることにあります。効果は応募数の増減だけでなく、内定承諾率と入社1年後の在籍率まで含めて評価してください。求人票の具体的な書き方は「応募が増える求人票の書き方|7つのポイント」で詳しく解説しています。求人票の改善と媒体運用をまとめて外部に任せる場合の進め方は「採用支援・求人媒体運用代行」のページにまとめています。費用感を先にお伝えしておくと、当社の同サービスは成果報酬ではなく月額10万円〜の定額制で、最低3ヶ月からのご契約をお願いしています。求人広告費はこれとは別途必要です(広告費自体は月1万円〜の少額予算からでも運用できます)。
見極めの仕組み化はどう進める?構造化面接と適性分析の位置づけ
評価基準と質問を事前に固定した構造化面接を軸に、適性分析で客観データを補うのが仕組み化の基本形です。
構造化面接とは、評価項目・質問・合格基準を事前に決め、全候補者に同じ条件で実施する面接手法です。面接官ごとの印象のばらつきを抑え、採用基準どおりの判定を可能にします。質問は、意見や仮定ではなく過去の行動事実を尋ねる形式にします。ステップ3で絞った必須条件ごとに「その条件が実際に問われた場面はいつか」「そのとき何を考え、どう動き、結果はどうなったか」を順に聞き、回答の具体度で評価する形が基本形です。「協調性はありますか」のように答えが1つに決まってしまう問い方は避けます。質問例の詳細は「採用面接で使える「行動質問」とは?」にまとめています。
仕組み化が急がれる背景には、選考材料の変化もあります。参考になるのが、株式会社マイナビ「2027年卒 大学生キャリア意向調査4月<就活生のAI利用について>」(2026年5月26日公表)です。調査は2026年4月25日〜30日に実施され、2027年3月卒業予定の大学生・大学院生1,258名が回答しています。同調査によると、就職活動でAIを利用したことがある学生は84.9%で、前年から18.3ポイント増えました。AIを利用した学生の用途は、複数回答で「ESの推敲」71.8%、「面接対策」56.2%が上位です。応募書類の文章表現や想定問答の準備には、こうしたツールが使われている前提で選考に臨む必要があります。書類と面接の印象だけに頼る選考が難しくなった事情は「「書類が良いのに面接で違う」が増えた本当の理由」で分析しています。
適性分析の位置づけは、合否を自動で決める道具ではなく、面接で深掘りすべき論点を洗い出す補助線です。行動特性の客観データがあれば、限られた面接時間を「基準に対する確認」に集中させられます。
当社も同じ考え方で、法人向けの適性分析サービス「TekiLens|適レンズ」を運営しています。合否を判定するサービスではなく、採用判断を支援する適性分析サービスであり、分析結果だけで採用の合否を決めるものではありません。また、本サービスでは職業紹介・求人紹介・求職者のあっせんは行いません。料金は税抜・目安で、ライトプランが初期費用3万円〜+月額9,800円〜(月20名まで)、スタンダードプランが初期費用5万円〜+月額19,800円〜(月60名まで)です(料金ページ)。最低利用期間はなく、月単位の縛りもありません(請求書払いで自動課金は行いません)。なお、法人フォーム(/contact-corp/)の選択肢は採用支援・人財紹介・その他の3つのため、TekiLensについてのご相談はTekiLensの法人向け問い合わせ窓口からお願いします。
入社後30日フォローはなぜ採用とセットなのか?
採用時に伝えたリアル情報と入社後の実態のずれを検証し、採用基準に還元する最後の工程だからです。
入社後30日のフォローで押さえたいのは次の3点です。
- 初日:受け入れ準備(席・備品・初週の予定表)を整え、「歓迎されていない」という最初のつまずきを防ぐ
- 1週間後:直属の上司が1on1で業務の疑問を解消する
- 30日後:「入社前の期待と違った点」を面談で直接聞き、記録する
30日面談で出た「求人票の印象と違った」という声は、求人票と面接の伝え方を修正する一次情報になります。ずれを記録して採用基準と求人票に反映すれば、次の募集ではその論点を先に説明できます。面談記録を採用基準の見直しに使う場合も、前述のとおり利用目的をあらかじめ本人に示しておいてください。
採り直しに時間と費用がかかる市場環境も、定着重視を後押しします。2026年6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍でした(厚生労働省・2026年7月31日公表)。正社員が不足していると回答した企業は50.6%です(帝国データバンク・2026年4月16〜30日調査。全国2万3,083社に照会し、1万538社が回答)。2026年上半期の人手不足倒産は227件で、上半期としては過去最多を更新しました(帝国データバンク・2026年7月8日発表)。募集をかけ直せば同じ人材がすぐ採れる、という前提が置きにくい状況である以上、定着まで見据えて採用を設計する意味は大きくなります。
よくある質問
早期離職とは入社後どのくらいの期間の離職を指しますか?
法律上の定義はありませんが、一般には入社後3年以内の離職を指します。厚生労働省の統計も就職後3年以内の離職率で集計されています。実務では特に1年以内の離職を、重大なミスマッチのサインとして扱います。
採用基準を厳しくすると応募が減りませんか?
必須条件を絞り込むほど、条件に合わない応募は減ります。応募総数がどの程度動くかは職種と地域の需給で変わるため、絞り込みの前後で応募数と選考通過率の両方を記録し、自社の数字で判断してください。応募の量ではなく、定着につながる応募の質を指標にすることをお勧めします。
適性分析の結果だけで合否を決めてもよいですか?
お勧めしません。適性分析は面接で深掘りすべき論点を洗い出す補助資料として使うのが適切です。合否は、構造化面接の評価表と分析結果を合わせて総合的に判断してください。
中途採用にも同じ採用基準の作り方は使えますか?
使えます。定着社員の共通点分析と構造化面接は、新卒・中途に共通する手法です。中途採用では、前職の退職理由と自社の環境が同じ不満を生まないかの確認を、必須項目に加えてください。
求人票に大変な点を書くと応募者の印象が悪くなりませんか?
印象がどう動くかは、書き方と読み手によって変わります。避けたいのは、入社後に初めて分かる条件を選考中に伏せたままにすることです。大変な点は、月平均残業時間や繁忙期の時期といった事実を数字で示し、会社として行っている対策とセットで書いてください。書き方を変えた効果は、自社の内定承諾率と入社1年後の在籍率で確認することをお勧めします。
出典・参考資料
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」2025年10月24日公表(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html・参照日2026年8月8日)
- 厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/4-21c-jyakunenkoyou-r05.html・参照日2026年8月8日)
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(2026年6月分)」2026年7月31日発表(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74767.html・参照日2026年8月8日)
- 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260519-laborshortage202604/・参照日2026年8月8日)
- 帝国データバンク「2026年上半期の企業倒産集計」2026年7月8日発表(https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/aggregation/20260708-bankruptcyh12026/・参照日2026年8月8日)
- 株式会社マイナビ「2027年卒 大学生キャリア意向調査4月<就活生のAI利用について>」2026年5月26日公表(https://www.mynavi.jp/news/2026/05/post_53452.html・参照日2026年8月8日)
- 厚生労働省「令和6年4月から、募集時等に明示すべき事項が追加されます」・同リーフレット(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html/https://www.mhlw.go.jp/content/001114110.pdf・参照日2026年8月8日)
- 職業安定法(第5条の3第4項、第5条の5)・職業安定法施行規則第4条の2第3項(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141・参照日2026年8月8日)
- 個人情報の保護に関する法律 第21条(https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057・参照日2026年8月8日)
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第9条(https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132・参照日2026年8月8日)
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則 第1条の3(第1項=年齢制限が認められる例外、第2項=職務の内容および必要とされる適性・能力・経験・技能の程度の明示)(https://laws.e-gov.go.jp/law/341M50002000023・参照日2026年8月8日)
定着から逆算する採用基準づくりを、自社だけで進めるのが難しいと感じたら、合同会社Via Novaにご相談ください。求人原稿の改善と求人媒体の運用代行は、月額10万円〜の定額制です(最低3ヶ月・求人広告費は別途)。人財紹介サービス(人材紹介)は完全成功報酬型で、採用が決まった場合のみ想定年収の30%〜を紹介手数料として頂戴します(最低保証はなく、入社後3ヶ月のフォローに追加料金はいただきません)。お問い合わせフォームでは「採用支援(求人媒体運用代行)」または「人財紹介サービス」をお選びください。→ 採用支援・人財紹介の相談窓口(お問い合わせ)
合同会社Via Nova(有料職業紹介事業許可番号:14-ユ-302463)

