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社員が定着する会社の作り方|中小企業の離職防止・組織づくり完全ガイド

2026 8/08
人事・組織開発
2026年8月10日

社員の定着は、採用基準・受け入れ・評価という「入口から処遇まで」を仕組みで整えることで底上げできます。定着率は「一定期間経過後の在籍者数÷対象期間の入社者数×100」で計測でき、離職防止の打ち手は7つの施策に整理できます。

帝国データバンクの集計では、2026年上半期の人手不足倒産は227件と、上半期として過去最多を更新しました。社員の定着はもはや福利厚生の話ではなく、事業継続の条件です。

本記事では中小企業の経営者・採用担当者に向けて、離職防止7施策の実務、優先順位の付け方、1人人事でも回る運用設計までを解説します。

  • 定着率は「在籍者数÷入社者数×100」。期間と対象をそろえて定点観測する
  • 離職防止は採用基準・オンボーディング・評価・賃金・社内公募・相談体制・労働環境の7施策
  • 人手不足倒産227件の約77.5%は従業員10人未満の小規模企業(帝国データバンク・2026年上半期)
  • 施策は同時に2つまで。離職者データの「辞めた時期と理由」から優先順位を決める
  • 1人人事は年間カレンダーに施策を配置し、毎月1テーマで運用する
目次

社員の定着率とは?定義・計算式と離職防止7施策の一覧

定着率とは入社した社員が一定期間後も在籍している割合で、離職防止策は7分野に整理できます。

定着率の基本の計算式は「定着率(%)=一定期間経過後の在籍者数÷対象期間の入社者数×100」です。例えば2025年度に10人採用し、1年後に8人が在籍していれば「1年定着率80%」となります。

離職率は「離職者数÷在籍者数×100」で、視点が逆の指標です。新卒・中途・全社員など対象と期間の定義をそろえて記録すると、施策の効果測定に使えます。中小企業の実務では、まず自社の定着率を測れる状態にすることが出発点です。

離職防止の施策は、次の7つに整理できます。

施策ねらい最初の一歩
①採用基準の明確化入口のミスマッチ防止活躍社員の行動特性を言語化
②オンボーディング早期離職の防止入社90日の受け入れ計画表
③評価とフィードバック納得感と成長実感月1回15分の1on1
④賃金・処遇の納得感生活不安・不公平感の解消賃金表と昇給ルールの明文化
⑤社内公募・キャリアパス辞める前の選択肢づくり兼務・プロジェクトの社内公募
⑥相談体制と心理的安全性人間関係離職の防止相談窓口の明文化
⑦労働環境・柔軟な働き方私生活との両立支援残業実態の見える化

なぜ社員の定着が中小企業の生存条件なのか?

2026年上半期の人手不足倒産は227件と過去最多で、社員の定着は倒産リスク対策そのものです。

帝国データバンクの倒産集計によると、2026年上半期(1〜6月)の企業倒産は5,335件と4年連続で増加しました。うち人手不足倒産は227件で、前年同期の202件から12.4%増え、上半期として過去最多です。業種別では建設業の65件が最多でした。

注目すべきは内訳です。人手不足倒産227件のうち176件、約77.5%を従業員10人未満の小規模企業が占めています(出典:帝国データバンク「全国企業倒産集計 2026年上半期」2026年7月8日発表・参照日2026年8月8日)。人手不足倒産の実数の中心は、従業員10人未満の企業にあります。少人数で回している組織では、欠員1人がそのまま担当業務の空白になります。

採用で補充できる時代でもありません。帝国データバンクの2026年4月調査(全国2万3,083社を対象とした調査で、有効回答は1万538社)では、正社員の人手不足を感じる企業は50.6%でした。前年同月の51.4%から0.8ポイント低下したものの、4月としては4年連続で5割を超えています(2026年5月19日発表・参照日2026年8月8日)。

求人側の需給も緩んでいません。厚生労働省の一般職業紹介状況によると、2026年6月分の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で前月より0.01ポイント上昇し、正社員有効求人倍率は1.00倍でした(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)」2026年7月31日公表・参照日2026年8月8日)。回答企業の半数が正社員不足を抱え、求人が求職者数を上回る状態が続く以上、辞めた人の穴を採用だけで埋める前提は成り立ちません。既存社員の定着が経営の防衛線になります。

採用市場全体の動きは「【2026年5月版】採用市場の最新トレンドと中小企業が今取るべき5つの戦略」で詳しく解説しています。

離職防止の7施策はどう実行する?①〜⑦の実務解説

7施策は「入口→立ち上がり→処遇→環境」の順で設計すると、中小企業でも無理なく運用できます。

7施策はバラバラの打ち手ではなく、社員の入社から活躍までの時間軸に沿った設計図です。①から順に読む必要はなく、自社の課題に近い施策から着手して構いません。

求人媒体の運用を代行する立場から見ると、定着の問題は入社後ではなく求人票をつくる時点で顔を出します。残業の実態、評価と昇給の決まり方、3年後に任される仕事——この3つを求人原稿に具体的に書けない会社は、応募者への説明も曖昧なまま選考を進めることになります。書けない欄があるとすれば、それは求人の課題ではなく制度の課題です。7施策の優先順位に迷ったら、まず自社の求人票を開いて「書けない欄」を探すのが最短の診断になります。

この「書けない欄」は、法令上も放置できません。2024年4月1日から、労働者の募集や求人申込みの際に明示すべき事項に次の3項目が追加されています(職業安定法第5条の3第4項および同法施行規則第4条の2第3項)。

  1. 従事すべき業務の変更の範囲
  2. 就業の場所の変更の範囲
  3. 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間または更新回数の上限を含む)

ここでいう「変更の範囲」とは、雇入れ直後の内容にとどまらず、将来の配置転換等も含めた契約期間中の変更範囲を指します(出典:厚生労働省「令和6年4月からの労働条件明示のルール変更等」・参照日2026年8月8日)。①と②は、社内で異動やキャリアの道筋を決めていなければ書けない欄です。ここが埋まらないまま求人を出しているなら、施策⑤のキャリアパス設計が未整備でないかを先に点検してください。なお、労働条件通知書として書面交付が義務づけられる範囲は労働基準法第15条・同法施行規則第5条第3項に定めがあり、契約期間・更新基準・就業場所と業務(変更の範囲を含む)・労働時間関係・賃金(昇給に関する事項を除く)・退職に関する事項が対象です。

施策①採用基準の明確化|入口の基準が曖昧だと後工程で挽回しにくい

早期離職の理由には、入社前に聞いていた条件や仕事内容と実際のズレ、という入口のミスマッチが含まれます。まず自社で長く活躍している社員に共通する行動特性を3〜5個、言語化してください。

言語化した基準は面接の評価項目に落とし込みます。過去の行動事実を尋ねる質問の作り方は「採用面接で使える『行動質問』とは?」が参考になります。面接の主観を補う手段として、適性分析サービスで働き方の傾向をデータ化する方法もあります。当社が提供するTekiLens|適レンズもその一つで、法人向けの料金は最小構成のライトプランで初期費用3万円〜+月額9,800円〜(税抜・月20名まで、詳細は料金ページ)、最低利用期間はありません。合否を判定するサービスではなく、採用判断を支援する適性分析サービスであり、分析結果だけで採用の合否を決めるものではありません。また、TekiLensは職業紹介・求人紹介・求職者のあっせんを行うサービスではありません。

応募者から適性分析やエントリーシートで個人情報を直接取得する場合は、あらかじめ利用目的を本人に明示する必要があります(個人情報保護法第21条第2項)。また職業安定法第5条の5では、職業紹介事業者だけでなく求人者である採用企業自身も名宛人とされており、求職者等の個人情報は業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして収集し、その範囲内で保管・使用しなければならないと定められています。選考で取得した情報を入社後の配置や評価に流用したい場合は、取得時点の利用目的にその旨を含めておいてください。

施策②オンボーディング|入社90日の立ち上がり設計

入社直後に何を教わるかが決まっていないと、本人は自分の立ち上がり具合を確認できないまま日々を過ごすことになります。初日・1週間・30日・90日の節目ごとに「教わること・できるようになること」を1枚の受け入れ計画表にまとめてください。

教育担当とは別に、気軽に相談できるメンター役を指名すると業務外の不安も拾えます。90日時点で振り返り面談を設定し、定着の最初の関門を通過したかを確認してください。

施策③評価とフィードバック|納得感と成長実感を作る

「評価されていない」という不満は、評価制度を作っただけでは解消しません。月1回15分の1on1を設定し、業務の進捗ではなく本人の状態と困りごとを聞く時間を確保します。

評価基準は文書化して全社員に公開し、昇給・賞与との対応関係を説明できる状態にします。基準が曖昧なままの評価は、不満の温床になりがちです。

施策④賃金・処遇の納得感|世間水準とのズレを放置しない

連合の2026春季生活闘争 第7回(最終)回答集計では、平均賃金方式で回答を引き出した組合員300人未満の中小3,831組合の賃上げ額・率(定期昇給相当込み、加重平均)は12,866円・4.69%、規模計5,368組合では16,400円・5.01%でした(出典:連合「2026春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果について」2026年7月3日公表・参照日2026年8月8日)。これは連合に加盟する労働組合のある企業の集計であり、無組合の中小企業の実態をそのまま表すものではありません。ただし求職者が比較の基準にするのは報道される世間水準です。自社の賃金を据え置けば、相対的には賃下げと受け取られます。

賃金の下支えも動いています。中央最低賃金審議会は2026年7月28日に令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安を答申し、目安はAランク(6都府県)54円、Bランク(28道府県)56円、Cランク(13県)56円でした。目安どおり改定された場合の全国加重平均は1,121円から1,176円(+55円、+4.9%)になります(出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」2026年7月28日答申・参照日2026年8月8日)。ただしこれは目安の答申であり、実際の金額は今後、各地方最低賃金審議会の調査審議と答申を経て各都道府県労働局長が決定します。現時点で2026年度の確定額ではない点に注意してください。

世間水準どおりの賃上げができなくても、賃金表と昇給ルールを明文化すれば「いつ・何をすれば上がるのか」を説明できるようになります。新入社員の給与が既存社員を上回る逆転現象への対処は「給与逆転の罠と賃金設計を壊さない採用の動かし方」で解説しています。

施策⑤社内公募・キャリアパス|辞める前の選択肢を作る

「今の仕事を変えたい」が「会社を辞める」に直結する状態は危険です。社内公募や兼務の仕組みがあれば、社員は転職の前に社内で選択肢を探せます。

例えば従業員20人の会社であれば、新規プロジェクトの担当を社内公募にするだけでも、挑戦の受け皿としての機能が期待できます。半期ごとの面談で異動・兼務の希望を申告できる場でも代替可能です。

施策⑥相談体制と心理的安全性|人間関係離職を防ぐ

人間関係を理由とする離職は、退職面談で初めて表面化しがちです。誰に相談すればよいかを明文化し、直属の上司以外の相談ルートを用意してください。

なお、労働施策総合推進法等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号、2025年6月11日公布)により、2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策が事業主に義務づけられます。企業規模を問わず同日からの適用で、講ずべき措置の内容は令和8年厚生労働省告示第51号の指針に定められています(出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」・参照日2026年8月8日)。

義務となる措置は10項目あり、そのうち相談体制に直結するのは、相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知すること、相談担当者が適切に対応できるようにすること、相談者等のプライバシーを保護する措置を講じて周知すること、相談等を理由とする不利益取扱いを禁じる旨を定めて周知・啓発することの4点です。社内向けの相談体制とカスハラ相談窓口は同じ導線に載せられるため、一体で設計すると効率的です。自社への適用範囲や具体的な整備手順は、社会保険労務士や都道府県労働局の窓口にご確認ください。

施策⑦労働環境・柔軟な働き方|低コストの柔軟化から

残業や休暇への不満は、実態が見えないまま蓄積します。まず部署別の残業時間と有給取得率を毎月集計し、経営者が数字で把握できる状態を作ります。

時差出勤や中抜けの許可など、費用がかからない柔軟化から着手すると小規模企業でも実行しやすくなります。制度を大きくする前に、まず「言えば検討してもらえる」と社員が思える状態になっているかを確認してください。

7施策の優先順位はどう付ける?

優先順位は理想論ではなく、過去2〜3年の離職者データの「辞めた時期と理由」から逆算して決めます。

7施策をすべて同時に始めると、中小企業の体制では息切れします。次の手順で自社の優先順位を絞り込んでください。

  1. 直近2〜3年の離職者を書き出す(在籍年数・部署・退職理由・退職時期)
  2. 入社1年以内の離職が多い→①採用基準と②オンボーディングを優先
  3. 3年目以降の中堅の離職が多い→③評価・④賃金・⑤社内公募を優先
  4. 特定の部署・上司に離職が集中→⑥相談体制(直属の上司以外の相談ルート)を優先
  5. 「労働時間・家庭との両立」が理由に多い→⑦労働環境を優先

同時に走らせる施策は最大2つに絞ります。退職理由には建前が混ざるため、可能であれば退職者との面談記録や同僚へのヒアリングで補正すると精度が上がります。

この棚卸しは在職者・退職者の個人情報を扱う作業です。人事管理のために取得した情報を離職分析に使う場合は、社内で定めている利用目的の範囲に収まるかを先に確認してください。個人情報保護法上、利用目的の範囲を超える取扱いには原則として本人の同意が必要になります。分析の単位を部署・在籍年数・退職時期といった属性にとどめ、個人が特定できる形で共有しない運用にしておくと安全です。

1人人事で定着施策を回すには?運用設計の型

1人人事では年間カレンダーに施策を配置し、毎月1テーマに絞って実行する仕組み化が現実解です。

兼任や1人で人事を担う会社では、思いつきで施策を足すと運用が破綻しがちです。年間カレンダーに施策を固定し、毎月のテーマを1つに絞ります。

  • 4月:オンボーディング集中月間(受け入れ計画表の運用)
  • 7月:評価・賃金の点検(昇給ルールと世間水準の確認)
  • 10月:キャリア面談月間(異動・兼務希望の申告)
  • 1月:離職データの棚卸しと次年度の優先順位決め

面談シートや受け入れ計画表は一度テンプレート化し、毎回作り直さないことが継続の条件です。手を広げすぎないための考え方は「採用担当者こそ「やらないことリスト」を作ろう」も参考にしてください。

求人媒体の運用など社外に出せる業務は外部の代行を使い、社内でしかできない面談と制度づくりに時間を残す配分が現実的です。

よくある質問

社員の定着・離職防止について、中小企業の経営者・採用担当者からよく寄せられる質問に回答します。

定着率と離職率の違いは何ですか?

定着率は「残った人の割合」、離職率は「辞めた人の割合」で、視点が逆の指標です。定着率は入社者を分母に、離職率は在籍者を分母に取るのが一般的です。どちらを使う場合も、期間と対象の定義をそろえて継続記録することが重要です。

中小企業の定着率は何%あれば合格ですか?

業種・地域・雇用形態で水準が大きく異なるため、一律の合格ラインはありません。実務では自社の過去3年の推移と比較し、悪化の兆候を早期に捉える使い方が有効です。業種別の目安が必要な場合は、厚生労働省「雇用動向調査」など公的統計を参照してください。

費用をかけずにできる離職防止策はありますか?

月1回の1on1、入社90日の受け入れ計画表、評価基準の公開、相談窓口の明文化は、ほぼ費用ゼロで始められます。いずれも導入そのものより、続けられる形に落とすことが課題になります。まず1つに絞り、3カ月続けてから次を足してください。

定着施策の効果はいつ頃あらわれますか?

オンボーディング改善は90日〜半年で早期離職の変化として見えやすい施策です。評価・賃金の見直しは昇給サイクルを1周する約1年が目安になります。四半期ごとに定着率を記録し、定点観測で判断してください。

社員10人未満の会社でも社内公募は機能しますか?

公募という形式より「異動や兼務の希望を口に出せる場」を作ることが本質です。少人数の会社では、半期ごとの面談で希望を申告できる仕組みでも十分に代替できます。新しい業務の担当を決める際に希望者を募るだけでも効果が期待できます。

まとめ|定着は「設計の総和」で決まる

社員の定着は、単発の福利厚生ではなく「採用の入口から処遇まで」の設計の総和で決まります。まずは離職者データの棚卸しと定着率の計測から着手し、優先施策を2つ以内に絞って年間カレンダーに落とし込んでください。

採用基準の設計や求人媒体の運用を含めて「定着する採用」の入口から見直したい方向けに、当社は採用支援サービス(求人媒体運用代行)を提供しています。リンクを開く前に、費用の条件を先にお伝えします。

  • スターター:月10万円〜の定額制(求人原稿改善・基本入札運用・月次レポート)
  • グロース:月15万円〜(応募者対応・面接日程調整・隔週での振り返りMTG)
  • 契約期間:効果検証期間を確保するため最低3ヶ月から
  • 求人広告費は別途必要(広告費自体は月1万円〜の少額予算からでも運用可能)
  • 開始までの期間:最短2週間〜が目安

当社は売上連動型ではなく定額制のため、当社側に販売ノルマがなく、広告費を無理に積む必要がありません。一方で、月10万円台の固定費が現時点の体力に合わないという判断も当然あります。その場合は本記事の費用ゼロで始められる施策(月1回の1on1、入社90日の受け入れ計画表、評価基準の公開、相談窓口の明文化)から着手してください。

サービスの詳細はVia Novaの採用支援サービス(求人媒体運用代行)のページに掲載しています。求人票の条件・訴求の設計から媒体別の運用改善まで、貴社の応募・採用データをもとに一緒に見直します。

ご相談は法人向けお問い合わせフォームから、お問い合わせ内容で「採用支援(求人媒体運用)について」を選択してお送りください。合同会社Via Nova(有料職業紹介事業許可番号:14-ユ-302463)が承ります。

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